ささきようすけの平面作品「泥雲[Drown]」とは・・・?

ささきようすけ展~ひとつとして区切らない~2024北海道立函館美術館7 絵画作品

 平面作品「泥雲」は、2020年ころから描いている、平面作品のシリーズです。

 ある時、目を閉じて瞼をおさえていると暗い視界の中に、光の模様が浮かんできました。その後も何度か同じような模様が見えてくる現象が起こり、この不思議な模様を絵にしてみたいと思うようになりました。

 南米の先住民族やアボリジニが描く抽象的な形との共通点も感じられ、私が近年参考にしてきた中沢新一氏の著作にあった「内部視覚」や「内部閃光」といったものではないかと、考えています。

→【参考】「内部視覚」や「内部閃光」が書かれていた神の発明(著:中沢新一)はこちら

「泥雲」は、自身の内部に陶酔すること、自身の外側の世界を見つめること。

ささきようすけ絵画作品画像泥雲[Drown] in to Space1
泥雲[Drown] in to Space

「泥雲[Drown]」という、作品のタイトルには理由、意味があります。

 この絵に登場する光の模様を見るとき、私は目を閉じて暗い視界を見つめます。

その行為は自分自身の内面を見つめる行為でもあるのかもしれません。光を発しながら、小さく振動して時間と共に形を変えます。

私は自分の内面を見つめながら、変化する雲の流れを見ている時との共通性を見出しました。

自身の内部に陶酔することと、自身の外側の世界を見つめることは同じことを意味するのではないかと思い、このようなタイトルにしました。

視覚に限りなく広がる「泥雲」を忠実に表現するためサイズや形を変えた。

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泥雲[Drown] in to Space(部分)

 初めは目に見えたこの形を、とにかく作品にしたいという想いから、サイズにこだわらずに様々なパネルに描きました。

それぞれ全体的な色を少しずつ変えながら、目にした模様をどのように表現すればよいか探りながら描きました。

ささきようすけ絵画作品画像泥雲[Drown] into Ground1
泥雲[Drown] into Ground

振り返ると、泥雲[Drown]は、正方形→横向きの長方形→縦向きの長方形→正方形へと、サイズや形が変わっていきました。

 この作品は同じような模様を繰り返し描くことで全体を構成します。作品としては大きさが決まっているので終わりがありますが、本来は私の視覚に限りなく広がっているものです。

次第にそのことをより忠実に表したいと思うようになりました。2023年、はこだてトリエンナーレに出展した作品では、同一サイズの作品を4点並べて展示しました。

 また、現在制作中の作品では45.5×45.5㎝の正方形の作品を繰り返し制作しています。

色や素材などそれぞれに個性的な作品でありながら、全てを並べて展示しても一つの作品として成り立つような作品世界を展開しています。

「泥雲」は、支持体と画材を微妙に変えながら、同じような模様を描いていきます。

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泥雲[Drown] Acomplish death

 主な画材はアクリル絵具ですが、墨汁等も使用します。木製のパネルに直接描くか、和紙や新聞紙を貼って描いています。

支持体と画材を微妙に変えながら、同じような模様を描きます。

一見同じような作品なので、毎回どの作品にもそれなりに違ったチャレンジを取り入れながら描いています。支持体も同じサイズと言いつつも、微妙な違いが出るように手作りしています。

 模様については、ひも状のものを形を変えながら埋め尽くしていきます。

初めの形がその隣の形を決め、その形がまた隣の形を決めという風に広がっていきます。一定のリズムを刻みながら描いていく行為は、それ自体が一種の瞑想のようなものなのかもしれません。

「泥雲[Drown]」は、2024年7月、北海道立函館美術館で展示します。

ささきようすけ展~ひとつとして区別しない~北海道立函館美術館1

 2024年7月13日(土)〜9月23日(月・祝)に開催される「ささきようすけ展〜ひとつとして区切らない〜」では、この「泥雲[Drown]」が重要な展示の一つとして登場します。

それぞれが独立した一つの作品でありながら、全体としても一つの作品として展示されます。

それは一本の木がそれ一つでも美しいのに、何本も集まって全体として大きな森を構成している、自然そのものの姿とも一致します。

大きなスケールで全てを展示するのは、個人の展覧会ではなかなか難しいものです。ぜひとも、北海道立函館美術館での貴重な機会をお見逃しなく!!